ほのさんのバラ色在宅生活 |
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感動的な入学式も、なんだか遠い昔のよう、
慌ただしくも充実した新生活が始まって1か月足らず。 ほのさんは、すっかり訪問の授業にも慣れてきて。 楽器にあわせて歌をうたったり、 先生のお膝のうえでもご機嫌で、 手に絵の具を塗ったって、もう泣いたりしないし、 とにかく、あたらしいことをするということが、 心から嬉しくて、楽しくて、仕方のない様子。 授業のない日は、うんともすんとも言わずに、 ただひたすらふかーい眠りに落ちて過ごす時間も多く、 いくら呼びかけてもおしゃべりしないものだから、 みなさんに心配されたり、 ほのさんのおこえがきけなくて さびしいなあ って言われたり。 それでも学校の先生がいらっしゃるとパキッと起きることも多く、 うんっ、とか、うんうーん、とか、 先生の問いかけに、さまざまにお返事できるようになりました。 これまでやったことのないことに取り組むときは、 スーッスーッと声をひそめて、目をぐっと見開いて、 目を吊り上げて真剣な表情をして、 全身で、いま何をしているのかを受け止めている様子で、 あるいは、あんまりびっくりすると涙をほろりと流すこともあったり。 (ほのさんの手のひらがフライパンになって、目玉焼きが焼けた、 という手遊びの時には、あんまりに衝撃的だったのか、 涙がほろり、でした 笑) あんまり一生懸命に取り組んで、はりきってお返事などしていると、 疲れてしまわないかしらと心配になることもあるけれど、 そのあと、くーっと眠りに落ちたり、 あるいは何日間か、ほとんど起きなかったり、 具合が悪くなることも無く、 自分でちゃんと調整ができるようになったみたいで、 それも大きな変化。 それから、授業は、 自分のベッドからソファーベッドに移動したり、 先生のお膝に乗ったり、 座位保持椅子に座ったりと、 たくさん移動して、いろいろな姿勢を取るので、 授業が終わってベッドに戻ると、 もう自然にたくさん痰が上がってきていて、 これまでみたいに雑音が取れないとれないと言って ものすごく時間がかかる、ということもほとんどなくなった。 授業が始まったことで、これまでのケア時間などがずれたりしたけど、 自然に痰が上がってきてくれるので、 時間がずれたことで体調が狂うということもなく、 授業の良い影響と、 ほのさんの体力がついたことをひしひしと感じている。 いやあ、小学生って、スゴイ。 本当に。 授業がはじまったことで、 毎日、午前も午後もびっしりと予定が詰まって、 かあさんが息つく間もなくなることで かあさん自身の体調もちょっと不安だったけど、 ほのさんがこれだけ授業を楽しみにしていること、 ぐんぐんと新しいことを吸収して、受け止めてくれていること、 またその様子をそばで見られること、 それがかあさんにとってもすばらしく嬉しことで、 忙しい生活の励みになっている。 これからは少しずつ、登校させてみよう。 こうして始まった、ほのさんの学校生活。 特別支援学校の訪問授業は、 ほのさんにとって本当に大きな大きな経験であり、 今後の成長がますます楽しみになってきたわけだけど、 そもそも特別支援教育というものがなんなのか、 入学に向けて行なってきた、疑問の多かった就学相談とか、 あるいは「教育」そのものが一体どういう意味を持つのか、 ということを、少し考える機会となった。 平成16年6月、「学校教育法の一部を改正する法律」が成立、 平成19年4月、改正法が施行。 従来の「特殊教育」は「特別支援教育」に改められ、 盲学校、聾学校、養護学校が、特別支援学校に一本化された。 その後、「障がい者の権利に関する条約」に規定された、 「インクルーシブ教育」の実現に向けて、 特別支援教育の今後が問い直されている。 この、「特別支援教育」への転換による大きな変化は、 それまでの「特殊教育」が 「障害の程度等に応じて特別の場所で教育を行う」ことだったのに対して、 「障害のある児童生と一人ひとりの教育的ニーズに応じて 適切な教育的支援を行う、としたことだという。 特別支援教育の推進に当たり、文科省は、 「特別支援教育は、障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けた 主体的な取り組みを支援する視点に立ち、 幼児児童生徒一人ひとりの教育的ニーズを把握し、 そのもてる力を高め、 生活や学習上の困難を改善または克服するため、 適切な指導および必要な支援を行うものである。 とした。 そして、特別支援教育が行われるべき「対象」「場所」についても、 「これまでの特殊教育の対象の障がいだけでなく、 知的な遅れのない発達障害も含めて、 特別な支援を必要とする幼児児童生徒が在籍する全ての学校において 実施されるものである」 とした。 さらに、 「特別支援教育は、障害のある幼児児童生徒への教育にとどまらず、 障害の有無やその他の個々の違いを認識しつつ 様々な人々が生き生きと活躍できる共生社会の基礎となるものであり、 我が国の現在及び将来の社会にとって重要な意味を持っている」 としている。 つまり、これらのことを噛み砕いて言うならば、 特別支援教育の大きなポイントは、 ①これまでの「障害種別」ではなく、「教育的ニーズ」に焦点を当てた教育であること ②軽度の発達障がいを伴うといわれる子どもたちへの支援もその範疇であること ③特別支援学校はその「センター的機能」を担う場所であること となる。 それでは、この特別支援教育が抱えている問題はどこにあるのか。 まず、さきほども出てきた、 「障がい者の権利に関する条約」において、教育というものがどう規定されているかというと、 a 障がい者が障害を理由として教育制度一般から排除されないこと 及び障害のある児童が障害を理由として無償かつ義務的な初等教育から 又は中等教育から排除されないこと b 障がい者が、他のものと平等に、自己の生活する地域社会において 包容され、質が高く、かつ、無償の初等教育の機会及び 中等教育の機会を与えられること c 個人に必要とされる合理的配慮が提供されること d 障がい者がその効果的な教育を容易にするために必要な支援を教育制度一般の下で受けること などと記されている。 この障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備を行うため、 平成21年12月、民主党政権は内閣に「障がい者制度改革推進本部」を設置。 同会議では、 ①「障がいに基づく分離」制度の廃止 ②地域の小学校への学籍の一元化 ③本人や保護者が特別支援学校や特別支援学級を選択する選択権の保障 などを議題として扱った。 一方、就学先の決定についてはどのような仕組みになっているかというと 「原則として、市町村の教育委員会が就学時の健康診断を踏まえ、 就学基準に該当しない場合は小(中)学校への入学期日等を保護者に通知し、 該当する場合には特別支援学校への就学を都道府県教育委員会に通知する。 ただし、障害のある児童の就学に当たっては、平成14年の学校教育法施行令の改正により、 専門家の意見聴取が、 平成19年の同施行令改正により、 保護者の意見聴取が市町村の教育委員会に義務付けられた。 また、就学基準に該当していても、市町村の教育委員会が、 小中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情があると認める児童生徒については 小中学校に就学させることが可能となった。 なお、多くの市町村で教育委員会が適切な就学指導を行うため、 障害の種類、程度に応じて教育学、医学、心理学等の観点から 総合的な判断を行うための審査・審議機関である就学委員会を設置している。 小難しい内容のことを書き連ねたのは、 自分自身の整理のためと、 障がいをもった子どもたちの教育についての実際が、 何に基づいて行われているのか、行われていないのか、 ということについて考えるにあたって、 とても大事なことであると思ったからだ。 ほのさんのように特別支援学校への入学を希望している場合、 年長さんの年の4月から、「就学相談」というものが始まり、 教育委員会の特別支援教育コーディネーターと呼ばれる人を通じて、 就学委員会に就学先をどうするかについて意見をうかがわなければならない。 これは、 「もし特別支援学校への入学を希望している場合は、教育委員会に連絡してください」 などとどこかで教えてもらうこともなかったし、 先に記したとおり、 就学前健診の案内が9月に送られてきて、 普通に地域の小学校に健康診断に連れて行って初めて、 「お宅のお子さんは地域の小学校は無理です」と言われたり、 「うちは特別支援学校を希望しているんですけど」となったり、 あるいは、健康診断自体に連れていくことができなくて、 はじめて教育委員会などに問い合わせて発覚する、ということにもなりかねなかったと思っている。 (ほのさんの場合は、療育センターなどにも通っていなかったし、 年上の小学生のお友だちなども身近にいなかったのだが、 まだ4歳ころに、 知り合いのY美さんに、 もし特別支援学校に入学させたいと思っているならば、 就学年齢の1年前にお母さんから連絡するんですよ、 と教えていただいていたので、 就学相談のスタートが遅れずにすんだ。感謝) どうして然るべき機関の然るべき人が、 特別支援教育を希望している可能性がある本人家族に、 きちんと「就学相談なるものを受ける必要があるので連絡してください」と アナウンスしない理由が、 どんな子どもも地域の小学校に籍を置くことに一元化する方向であったり、 特別支援学校への入学はあくまで保護者の意向であると取り決めたから、 であるのだとしたら、 何も知らずに、障がいを持つ子どもの親にしてみればいささか「不親切きわまりないことであり、 何を「尊重」してのことなのかわけがわからないなと思う。 そうしてスタートした就学相談だが。 まず、市の特別支援教育コーディネーターと呼ばれる人に、 「ほのさんのように障がいを持ったお子さんは、 地域の小学校であろうと、特別支援学校であろうと、 どこに入学するにしてもまず、 県にお伺いを立てる必要があります」 と言われてスタートした。 その時点でかあさんは、「就学相談」なるものが、 何のためなのかよくわかっていなかったのだが、 このコーディネーターの説明にはいささか???だった。 先に記したとおり、障がい児の就学にあたっては、 専門家の意見聴取が必要であり、 そして、平成19年以降、保護者の意見聴取が義務付けられたとはいえ、 実際の就学相談は、こちらの意向に沿って、というものではなく、 専門家で構成される就学委員会でそれぞれの子どもの就学先への意見をもらうために、 色々な質問をされ、こちらの希望を聞かれる、という流れだった。 ほのさんがそもそも特別支援学校を選んだのは、 これまで訪問看護師さんやPTさん、OTさん、ヘルパーさんなど、 さまざまな方たちとの関わり合いの中で、 手や足が動かせるようになったり、 初めは単なる「リーク音」だったのが、うん、とかうんうーんとか、 さまざまな声色で問いかけにタイミングよく「声」を出せるようになったり、 手の動きを利用してスイッチやパソコンに取り組むようになったりと、 すこしずつ「自分」と「そと」の区別が育ち、 「そと」との関わり合いの中でじっくりと成長してきたということがあったため、 個別のニーズにあわせてかかわってくれる(だろう)特別支援学校を希望したのだ。 そして、入学の時点で訪問籍を希望したのは、 少しずつ挑戦していきたいと思ったこと、 苦手な冬に、通学籍では登校できない、先生も訪問してくれない、 では困るから、という理由からだった。 もちろん、1回目の就学委員会から出された意見も、 「特別支援学校」の「通学籍」というものだった。 コーディネーターさん曰く、 就学委員会のメンバーからは、「通学籍」というところを強く言われた、ということだった。 本人や親は、就学委員会には出席できず (つまり、就学委員会のメンバーは、ほのさんに会ったことがない) あくまでコーディネーターが作成した書類をもって参加して意見をもらうので、 委員会に提出した、判断の材料になる書類を見せてもらったところ、 なんのことはない、 食事、排せつ、着脱などのそれぞれの項目について、 全介助から自立までの段階のどこにあてはまるか、といったようなことがずらっと並び、 そのあとに、保護者の希望、教育的ニーズという欄があって、 幾度かのコーディネーターの面談の中でこちらが話した内容が、 簡単に2、3行で書かれた小さな用紙だった。 我が家においては、 「特別支学校」「訪問籍」という点において、 結果的に就学委員会の出した意見と一致していたから良かったものの、 その結論を導き出した道筋には大きな違いがあって、 特別支援教育は「障害種別」によって行われるものではないとしているにもかかわらず、 やはり、就学先を決定する際には、 本人の自立度や医療的ケアの有無、人工呼吸器をつけているかどうかなどが 大きく関わっている、というより、 それのみによって判断されているといっても過言ではない、という印象を受けた。 つづく
by honohono1017
| 2014-04-30 22:44
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