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ほのさんのバラ色在宅生活


低酸素脳症、人工呼吸器をつけた娘とのナナコロビヤオキ的泣き笑いのバラ色在宅ライフ
by honohono1017
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天まで届け、バイオリンの音。

昨日の夕方のはなし。

外はしとしと雨模様。
こんな日は、これしか、ありませんね、と
ほのさんは、かあさんのお膝の上で過ごした。

ここのところ、お出かけはたくさんしていたけど、
抱っこは久しぶりだったので、
かあさんに身を任せるほのさんの重みは、
一段とずっしりとしたものに感じられた。

ほのさんは、ずっと目を見開いて、
しきりに眼球を動かし、
かあさんのおはなしにあいずちを打ってくれていた。

始終、ご機嫌。

ベッドに戻って、
おやつのソリタ水を飲みはじめて、すぐのこと。

サチュレーションが急激に下がり、
95まで。

すぐに酸素1ℓを流したが、
普段ならすぐに100まで回復するはずのサチュレーションが、
95から、上がってこない。

ときおりものすごく苦しそうな声を上げるし、
呼吸器の気道内圧も、
何回かに1回、MAXまで、すごい勢いで、振り切る。

すぐに吸引。

確かにズズっと痰が引けるが、
これが正体とは、思えない。

聴診器で胸の音を聞くが、
エアー入り音が、普段より若干弱い。

胸の上がりは、どうだ。

服をはだけてみると、
左の胸の上がりが、
右に比べて、少し、悪い気がする。

タッピングを繰り返しては、吸引。

引ける、が、これが原因ではない……

何度も繰り返すが、サチュレーションは回復しない。

注入を中断して、ベッドを倒し、仰向けにさせ、
かあさん、入魂の排痰。

顔色は、悪くない。

だが、アタマをよぎるのは、
当然、
一昨年の、痰詰まり瀕死事件。

ここのところずっと、こんなことはなかったので、
かあさんも、久々に、焦る、
気が。

入念なタッピングとスクイージング、
ほのさんに一番有効な、
背中の後ろに手を入れて体を揺する動作を繰り返し、
今までと逆の横向きにさせ。

吸引。

ズズズズズーッ。

これだ。

吸引カテーテルも、かなり深めに入れて、
5回、引いただろうか。

サチュレーションが100になり、
しばらく様子を見てから、下降しないことを確かめ、
酸素をOFFに。

99と100を、しばらく行ったりきたりするが、
しばらくして、100に、安定。

悲痛な声もおさまり、
呼吸器の気道内圧も、下がった。



ほっと、した。

これで、だいじょうぶ。

引き続き、注意は必要だが、
危機は、脱した、
ということか。


久々に、ほのさんの状態から、
具体的な「死」を連想した、日。

いろんな思いが、駆け巡った、晩だった。



そして、今朝。

この連休中に、
おともだちのS花ちゃんが、お空に旅立っていたという
お知らせを受けた。

なぜ。

とっさに思った、この2文字。

そして、やるせなさがこみ上げ、涙が出た。

S花ちゃんのおかあさんに思いを馳せると、
自分のいのちにかえてもいいくらいの、
愛しい娘のいのちが、
たった昨日まで、
目の前であたたかくやわらかかった娘が、
急にいなくなってしまったということを思うと、
かあさんなどが、
思いを馳せることなど、
到底できない、と
打ちひしがれる。

その一方で、
S花ちゃんが、
めいっぱい輝いて、
いっしょうけんめい、いのちの灯をともした、
この3年と4ヶ月という時間は、
なんと大切で、
キラキラとしていたことか。

感謝の気持ちで、いっぱいなのだ。





これまで、何度、
大切なおともだちを、見送っただろうか。

そして、いつか来る、
ほのさんの、死。

いくら考えても、考えても、
わからない。

死は必ず訪れるものだという結論を、
何度導き出しても、
ちいさなこどものいのちが、
どうしてこんなにも早く旅立たなくてはならないのか、
答えなど、
出ない。


昨日も。

痰を詰まらせている、ほのさんを見て。

もしかしたら、いま、
奪われるかもしれない、
かあさんの手から、
ほのさんのいのちが、
零れ落ちてしまうかもしれない、
そんな考えが何度もよぎりながら。

しかし、
ほのさんが苦しいと訴えている声に気付くのも、
どこをどうしたら痰を出してやれるのかも、
いま、
こうして目の前で苦しんでいるほのさんを、
助けることができるのは、
ほかでもない、
かあさんしか、
いない、
という、
そんな究極の気持ちに、
自分自身が支えられ、
奮い立たされ、
ほのさんを愛しいという気持ちが、
溢れて、
溢れてくるのも、
確かなことだった。



S花ちゃんも、
おとうさんとおかあさんの胸に抱きしめられ、
幸せな気持ちでいっぱいで、
お空に、旅立ったのだと思う。



チャイコフスキーの、ヴァイオリン協奏曲は、
ほのさんと見ていた、
のだめちゃんの中で使われていた曲の中で、
かあさんの一番好きな曲だ。

連休中に、
のだめちゃんの映画を見に行ったとき、
ほのさんと、おうちのテレビでいつも見ていた
「のだめちゃん」ではなく、
大きなスクリーンに映し出される映像と、
となりにほのさんがいないという状況を、
かあさんは、なんだかふと、
「あれ?」と思った。

そして、
不思議なことに、
それは、
とても、
とても、
穏やかな気持ちで、
いつか、ほのさんがお空にいってしまったときに、
ああ、まだほのさんが元気にしていたころ、
かあさんはこの映画を、
ほのさんをおいて、
見に行ったなあ、
と、
必ず思い出すだろうなあ、
と、思ったのだった。


それが、
ほのさんがいま、
生きているということであり、
そして、
そのいのちには、
必ず終わりが来るということであり、
そんな、
ほのさんといういのちと、
かあさんは、
まいにち、
まいにち、
ともに、生きているということなんだ。


美しいヴァイオリンの音色が、
S花ちゃんと、
ご家族のところにも、
届きますように。



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by honohono1017 | 2010-05-12 11:53 | Life
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