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ほのさんのバラ色在宅生活


低酸素脳症、人工呼吸器をつけた娘とのナナコロビヤオキ的泣き笑いのバラ色在宅ライフ
by honohono1017
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「選択肢」としての臓器提供、という名の誘導。

今年7月全面施行される改正臓器移植法。

それに伴い、小児の臓器提供が可能となるが、
小児(6歳未満)の脳死判定基準案が、
厚生労働省臓器移植委員会にて4月5日、公表された。

しかし、医療現場では、蘇生力の高い小児の、
脳死判定は困難との声が多く、
実施を3ヶ月後に控えて戸惑いが消えない。

これまで、小児の臓器摘出が可能な約300の臓器提供施設に追加される、
小児専門病院の28施設が公表されたほか、
今回、小児脳死判定基準案も公表され、
小児脳死移植に向けた準備が進む。
だが、医療現場からは小児の脳死判定や
臓器摘出への反発や導入に消極的な意見も出ている。

(毎日新聞4月6日)



最近では、ほとんど報道されることもない、
臓器移植法改正のこと。

改正法全面施行を目前に控え、
やはり、胸騒ぎがする。

マスコミが、「長期脳死」と呼ばれたこどもたちを、
この施行を前に、どのように取り上げるのか、
取り上げないのか。

今年1月出版した、
「ほのさんのいのちを知って
~長期脳死の愛娘とのバラ色在宅生活~」
の中には、
昨年、この法律改正について国会での議論中に
我が家が考えていたことを、リアルに綴った。

だが、施行が目前に迫った今、
かあさんの思いもずいぶんと変化している。

端的に言えば、
「脳死」は死の基準ではなく、
脳「死」ではなく、「不可逆的昏睡」であって、
臓器移植をするときの概念であるということ。

ほのさんは、
「長期脳死」でもなんでもなく、
この法律とは全く関係のない子であるということ。



今日、「日本臓器移植ネットワーク」の作成した、
「主治医にしかできないこと
~選択肢の提示としての臓器提供~」
というドラマを見た。
(↓ ↓ みなさん、ぜひ見てください)
詳しくはこちら


このドラマは、
家族からの臓器提供の申し出のあった場合、
病院側から臓器提供を「選択肢」として説明をした場合に比べて、
臓器提供の時期としては
遅すぎる場合が多い、
というセンセーショナルな統計からはじまる。

日本臓器移植ネットワークが作成したものであるから
当然なのだろうが、
あくまで、「臓器提供」をすることが
大前提な話であるところが、
普通に見ていたらわからないところが、
とても恐ろしい。



これまで、ほのさんのいのちについて色々なところで
お話しするたびに、
あるいはこれまでの医療体験を通して常に思うことは、
医療者にとって、
回復する見込みのない患者、
あるいは障害が残る患者を、
救うことがいいことなのかどうか、
あるいは救うことに意味があるのだろうか、
と思っている人が非常に多いということ。

そのような考えは、
医療従事者を目指す若い方たちの中にも
あると知って、少しショックだった。

確かに、かあさんだって、
「重症な障害が残ることは確実」
と宣告されたときに、
この子は幸せになれるだろうか……
と、恐ろしく不安だった。

この世の中は、健常であることが、
「当たり前」であり「普通」である社会なのだろう。

そして、日本の医療とは、
「治すこと」なのだ。

ほのさんは、これ以上の回復が見込めない。

だが、常に医療が必要である。

でも、ほのさんのような子を「支える」医療は手厚くなく、
「支える」とか、「見守る」などという概念そのものが、
日本の医療には大きく欠けているように思う。



閑話休題。
ドラマの話に戻る。

このドラマは、あくまで
「選択肢」の一つとしての臓器移植という方法を提示する、
そして、「患者の意思を尊重する」ということを
言っている。

そして、その「選択肢」を提示できるのは、
患者の意思を尊重できるのは、
主治医しかいない、と言い切っている。


「選択肢の提示」……。

そもそも、日本の医療という環境は、
「選択肢」を提示することが得意な世界ではない。

一昔前は、医者は「先生」さまさまで、
絶対であった。

患者は病気に対する知識もなく、
先生の言うことを聞くことが「良い方法」であるとし、
それはある程度、医者と患者の間に信頼関係が
あったからだろう。

そして、社会は変わり、
患者は自分の病気に対する知識を得、
患者自身が治療法を選ぶ時代となった。

一方で、医療訴訟が絶えない。

医療者と患者の間に信頼関係を作ることは非常に難しく、
医療者の考えと、患者の思いが、
すれ違うことも多い。

その中に置いて、
「看取り」が近いという状況の患者を前に、
「臓器提供」という重大な方法を
「選択肢」のひとつとして提示することが、
そもそも医者にできるのだろうか。

「死」が近い患者を目の前にした家族は、
現状を理解することでも精一杯である。

救急医が全力を尽くすことが大前提というが、
救急医が全力を尽くし、
家族に寄り添おうと努力すればするほど、
その医者から「臓器提供」という選択肢が語られたのなら、
家族にしてみれば、
「これだけ良くやってくれた先生が言うのだし、
誰かの役に立てるのならば……」と
気持ちは流されていく。

ほのさんは、生後2週間目ごろに、
「脳死に近い状態」と宣告されたあの日、
主治医から「臓器提供の方法もある」という「選択肢」を与えられていたら、
かあさんは、提供したかもしれないと思っている。

良いか悪いかは別として、
現に、「臓器提供」は「選択肢」の一つであることは
明らかな世の中である。

もし、医者がその「選択肢」を家族に説明するのであれば、
臓器提供へ誘導するのではなく、
あらゆる「選択肢」を平等に説明する必要が
あるのではないだろうか?

突然の事故や病気で、
積極的治療の手が尽くされ、
それ以上回復の見込みがないということを理解した家族は、
このドラマのように、
では、「人の役に立てるのなら」と、
簡単に臓器提供を選ぶものだろうか。

「治す」こと「回復する」ことを医療とする医療者が、
悲しいかな、「脳死」を「死」としてしまうとしても、
家族にとってはたった、何時間だとしても、
患者が目の前で、あたたかく、そこに存在していてくれること、
そして、徐々に「死」を迎えていくこと、
そのような最期を迎える「選択肢」は、
必ず存在するはずだ。

「脳死」を死として臓器提供を選ぶ選択肢と、
積極的治療はなく回復は見込めなくとも、
患者本人の「いのち」が尽きるのを見守る「医療」という選択肢は、
医療者の中に存在しなければ、
ただの誘導となってしまう。


だが、そもそも、患者の切羽詰った一大事に、
家族にとっても、「今後」について決定しなければならないという極限状態に、
医者がはじめて選択肢を説明しなければならないということ、、
それ自体が、
国民一人ひとりに、
正しい臓器移植、提供に関する知識が無いこと、
きちんと理解されていないということを
明らかにしているのではないか。



ドラマの最期に、
「選択肢としての臓器提供を積極的にご提示いただいている、
市立札幌病院の救命救急センター医師」のインタビューがある。

その医師は自分が積極的に取り組んできたことを
「良かった」と話し、
積極的にこの「オプション」を提示していきましょう、
と呼びかける。

自分は「救命医」だからこそ、この選択肢を提示することができる、
と言うのだが、
日本の医療の中で、おそらく最も
「救うこと」「助けること」を仕事とする医者が、
本当に、この「選択肢」というものについて、
公平に示すことができるのだろうか疑問だ。




医療は万能ではない。

治療することができる病気ばかりではない。

病気は治療することができるかもしれないが、
医者は「いのち」を決めることはできない。

回復することがなくとも、
いずれその心臓が止まることになっても、
その「いのち」が、
「誰かのために差し出されるべきもの」だという考えが、
救急医療の場面において
当たり前になることを、「良いこと」とされることを
心から危惧する。




この、日本臓器移植ネットワークのホームページには、
小中学生向けに、
臓器移植のことをわかりやすく書いたページがある。

その中で、
「心臓を動かしているのは、何?」というタイトルで、
脳死と心停止について説明している部分で、

「ただ、人工呼吸器(じんこうこきゅうき)をつけていると、
機械の力で血液をからだじゅうに送ることができるので、
死んでいるはずなのに「からだはあたたかい」
という状態になります。


というくだりがあった。

死んでいるはずなのに


大人でさえ、
「脳死」という状態がどういう状態なのか、
心停止ではなくて、
なぜ臓器移植において「脳死」という状態が
注目されているか、
正しく理解している人が少ないというのに、
こどもに対して、
このような危険な教え方をすることは
避けていただきたい。

この書き方では、
「人工呼吸器をつけいている人」は
「死んでいるはずなのに」
と受け取りかねない。

こどもに説明するのには、
まず大人がきちんと理解しなければならないはずだが。

脳死とも、臓器移植とも無関係の、
「人工呼吸器をつけている」ほのさんの親として、
この表現は、
非常に不快であり、
間違っていると、思う。

臓器移植は、
あくまで一つの「治療法」では、ないのですか。




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by honohono1017 | 2010-04-20 13:43 | normalization
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